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【サッカー】イギリスのEU離脱がプレミアリーグにもたらすもの

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2020年1月31日、イギリスがEU(欧州連合)を正式にBrexit(離脱)しました。
かねてより影響や余波に注目が集まっていた話題ですが、正式な離脱から1か月あまりが経過。サッカー好き、特にそれなりに長くイングランドのプレミアリーグを楽しませてもらっている身としては、サッカー界に及ぼす影響、今後の流れが気になりました。この機会に色々と調べてみましたので、まとめてみたいと思います。

※前半は欧州連合とBrexitについての基礎知識ですので、サッカーに関する部分は ”3)離脱によって予想されるサッカーに対する影響” からご覧ください

欧州連合とは

そもそもEU(欧州連合)とはなんでしょう?
中学の社会で教わった気がするけれど、説明してと言われると難しいですよね。改めて簡単にお勉強してみます。

欧州連合とは、現在ヨーロッパ27か国が加盟する政治と経済に関する同盟、共同体の事を指す。

大まかに現在の体制が形成されたのは1993年、今年で成立して27年目。元々は第二次世界大戦後のヨーロッパ各国の戦後復興のための相互協調、特に当時世界中に大きな影響力のあったソ連に対する反共産主義体制の構築から始まった。

エネルギー資源や材料の関税撤廃を目的に1957年に主要国で策定された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)と欧州原子力共同体(EAEC)、経済的な側面での統合を目指すために同じく1957年に締結された欧州経済共同体(EEC)が元となる。その後これらが一つの運営組織となり、1967年に欧州諸共同体(EC)という体制に移行。

さらに司法や法制度の統一、パスポートによる人の流れの抑制の廃止、加盟国内での市民権の確立のため、1993年に現行の欧州連合体制となる。その後1999年に加盟国の大半で通貨も€(ユーロ)に統合されている。

なんのこっちゃ。
要は冷戦時代にアメリカ、ソ連の2大国に対抗するため、ヨーロッパの主要国が中心になり一つとして固まろう、協力し合いましょうという共同体ですね。その後経済面や文化面でより強固な繋がりを持ち加盟国が協調して発展していこう、お互いに守り合おうという形に変化してきました。では具体的にEUに加盟していると、一体どんなメリットがあるのでしょう。

[加盟国にもたらされるもの]
・加盟国内の移動にパスポートがいらない
・加盟国共有の市民権を得られる
・共通通貨€が使える(19か国のみ)
・貿易や商品のやりとりの関税がほぼない
・教育、科学面での協力
・軍事、防衛面での同盟的な側面

これだけ見ると、なんだ良い事しかないじゃないかというものなんですが。
ではなぜイギリスにこの連合を脱退する必要があったのでしょうか。

なぜイギリスはEUを離脱したのか

なぜイギリスは欧州連合を脱退するに至ったのか。
元々イギリスでは欧州連合からの脱退を求める声はありました。そもそも大英帝国時代から世界の主要国の座に常にあり、第一、第二次大戦共に戦勝国となったイギリスは、単独でも十分に強い国です。ヨーロッパの経済協力の同盟に加わったのも、あくまで経済的な恩恵を得ようとした部分が大きく、他の加盟国と比べればそういった同盟に依存する割合は少なかった。

また欧州連合に加わることのデメリットとして経済や貿易、人の移動に対する規制が難しい点があります。加盟する事で関税がほぼかからず物の売り買いはできますし、厳しい入国審査なしにEU内を移動できるというメリットはあるものの、裏を返せばその制限が必要になった場合に独自で規制する事が難しくなります。

新しく法律を作るにも、いちいちEU加盟国の承認が必要になってしまう。何を決めるにも合意の上、合意されたルールには従わなければならない。こういった面は19世紀の帝国時代に「栄光ある孤立」を謳っていたイギリスからすれば、足枷に感じられた部分もあった。通貨に関しても€を採用せず現在に至るまでポンドの独立性を維持しています。

そういった背景からイギリスが欧州連合から脱退するか否かという議論は、過去何度も話し合われてきましたが、加盟しているメリットも大きいため脱退派が世論過半数以上を占める事はありませんでした。

ところが脱退派の世論を大きく後押ししたのは移民問題でした。
元々EUの中では景気が良かったイギリスは、職を求める移民が多かった国です。歴史上も植民地政策を推し進めていた背景から、様々な人種が混在する国ではありました。しかし2012年ごろから右肩上がりにEU圏内、圏外関わらず移民が急増し始めます。これはイラク戦争から端を発した中東の情勢不安が遠因となっており、職を失った移民達が少しづつEU圏に流入してきていました。

正規の移民が国内に入ってくる事自体は悪い事だけではありません。働き手が増えればそれだけ経済効果はありますし、きちんとした市民権を得ていれば税金を支払ってくれるわけですから、国としての税収も増えます。しかしこの増加量があまりに急激過ぎ、3年間で約10万人以上の移民がイギリスに押し寄せました。

特に職を求めてロンドンなど都市部に移民が急増し、元々のイギリス国民の雇用問題に影響を及ぼし始めます。ここで問題になってくるのが「規制」に関わる部分です。EU圏外からの移民についてはイギリスが自主的に制限する事ができますが、EU圏内からの移民については、その自由がEUで保障されている以上、制限する事ができないのです

そして転機となったのが2015年ごろのヨーロッパ全体で問題となった難民危機でした。チュニジアやエジプトの革命から始まった反政府運動「アラブの春」、リビアやシリアの内戦の影響から、中東やアフリカなどから前年比2倍以上、100万人を優に超える数の難民がヨーロッパに殺到します。

2015年1月1日から6月30日までにEUとEFTA加盟国の受け取った難民申請(Eurostat)

2015年1月1日から6月30日までにEUとEFTA加盟国の受け取った難民申請(Eurostat)

この難民危機は皆さんの記憶にも新しいところではないでしょうか。住むところを失くした難民達が大量にヨーロッパに押し寄せ、どの国がどの程度難民を受け入れるのか大いに揉め、難民船の沈没事故やテロの増加など、悲しい事件もこの頃から急激に増え始めました。ヨーロッパ全域で雇用問題や治安低下などが問題視され、人種差別問題がより一層センシティブな話題になったのもこの頃です。

当然イギリスにもその影響はあり、元々移民の増加傾向にあった背景から、EUを離脱し自主独立性と権限を保とう、自分たちの事は自分たちで決めていこうという離脱派の世論が急増します。この議論の過熱により政権運営がままならなくなってきていた当時のデーヴィッド・キャメロン首相は、事態の鎮静化のため2016年に国民投票を実施します。

恐らくキャメロン首相の想定としては、離脱派が増えたとはいえ残留派が過半数という結果となり、改めて安定した国政の運営にかかるつもりだったはずですが、この国民投票で離脱派は52%、残留派48%とEU離脱派が過半数となり、イギリスはEUからの脱退の道を歩むことになります。(国民投票自体に法的な拘束力はないものの、民意として政権の決断を後押ししました)

その後キャメロンは責任を取って辞任し、後任のティリーザ・メイ首相もEUとの交渉のイニシアティブを取れず辞任。現職のボリス・ジョンソンが首相に至るまで、国内はこのBrexit(離脱)問題で揉めに揉めます。

スコットランドと北アイルランドはEU残留を支持しイギリスからの独立論が再燃しますし、ヨーロッパの金融の中心であったロンドンからの投資家や銀行の流出とポンドの下落、都市部と郊外での主義主張の対立、ジブラルタルの関税問題など、本当に多岐に渡って揉めます。というか何もはっきりと決まらないまま、半ばなし崩し的に1月31日に離脱に至ったのであります。

これ以上Brexitについて深堀するとこの記事の趣旨から脱線しますのでまとめますが、要はイギリスは以下の様な権限を守るために離脱したことになります。

移民、難民への自主的規制
イギリス単独での自由貿易の利権
年間1兆円にも及んだEUへの支出削減
経済的利益の保護
テロからの国民の保護
国民保険サービスの保護

さて、このイギリスの欧州連合からの離脱が、構成国のひとつであるイングランドのサッカー、特にプレミアリーグにどういった影響を及ぼす可能性があるのでしょうか。

離脱によって予想されるサッカーに対する影響

それでは今回イギリスがEU(欧州連合)を離脱したことによりサッカー、いやここはあえてイギリス風にフットボールと言いましょう。イングランドを始め各国のフットボールにはどういった影響が出てくるのでしょうか。

■当面の景気変動についての余波
英ポンドの対米ドル相場は長らく1.4ドルを下値として安定していましたが、今回のBrexitによって約30年ぶりに1.4ドルを割り込み、ポンド安が進んでいます。

これは単純に国外からの選手獲得にかかる費用が増加する事を意味し、これ以上イギリスの景気が冷え込めば国外選手の獲得自体に歯止めがかかります。そして逆に国外のクラブからすればイギリス圏の選手を安く買えることになるので、選手の流出に繋がる事が予想されます。

この点については今後のイギリス自体の金融対策や景気に左右されるため、予想が難しいところです。

■国外選手と労働ビザの問題
現在プレミアリーグに厳密な外国人枠の規定はありませんが、プレミアリーグで国外の選手がプレーする場合、今まではEU圏内の選手かどうかが非常に大きな要素でした。

Brexit前までの現状の規定は―
EU加盟国およびEFTA加盟国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)の国籍を持つ選手は登録に制限はない
その他の地域についてはイギリスの外国人労働許可証を取得する必要がある

この労働ビザの発給に関する条件がなかなか厳しく、以下がまず自動認定の条件になります。

・FIFAランキングが50位以内の国の選手であり、以下条件を満たすこと
1~10位:過去2年の国際Aマッチ公式戦で30%以上の出場
11~20位:過去2年の国際Aマッチ公式戦で45%以上の出場
21~30位:過去2年の国際Aマッチ公式戦で60%以上の出場
30~50位:過去2年の国際Aマッチ公式戦で75%以上の出場

ここがまず大きな問題で、今回イギリスがEUから離脱したことにより、がなくなる方向になる訳です。これはそもそもEU共通の市民権から起因するルールなので、今後厳密化する事はほぼ間違いありません。

つまり今まで労働ビザの壁がなく獲得できていたEU圏内の国籍の選手たちは、の厳しい代表出場歴の条件を突破しなければいけなくなります。

またヨーロッパの二重国籍を所有していた南米やアフリカ出身の選手たちも同様に、ビザの獲得が難しくなります。

現在チェルシーの中盤の要として活躍しているフランス代表のエンゴロ・カンテですが、彼が2015年にフランスのカーンからレスターに移籍した際、代表経験は全くありませんでした。今後彼の様な経歴の選手は、労働ビザの取得に大変苦労することになります。

現在プレミアリーグの外国籍選手の比率は非常に高く、平均して先発メンバーの7割は外国人選手が占めると言われています。この国外選手の獲得が難しくなることはすなわち、リーグ全体でのレベルの低下に繋がる恐れが出てくるのです。

※ちなみに、上記条件を満たさなければ絶対に労働ビザが下りない訳ではなく、その場合はさらに細かい判断ルールが存在します。その点については以下Qolyさんの記事が詳細に分かりやすく解説をされています。

食野のシティ移籍は?プレミア移籍の“壁”、労働許可証はこうやって取得する

■18歳以下の選手との契約問題
次に大きな問題となるのは、18歳以下のいわゆるユース世代の選手たちの国外からの獲得についてです。

現在未成年の保護を目的として、FIFA(国際サッカー連盟)の規定では未成年者の国際移籍は世界的に禁止されています。
ただし保護者や両親がサッカー以外の目的で移住した場合や、EU加盟国内に住んでいる16歳~18歳の選手がEU内で移籍する場合は免除されていました。

この点も同様にイギリスがEUから離脱したことにより免除対象から外れるので、才能のあるユース世代の選手を海外から獲得するという近年の育成方針(特にビッグクラブ)は見直しを迫られることになります。

これはクラブの戦力維持が難しくなることももちろんですが、自国で結果を出しプレミアのビッグクラブへ育成世代での移籍を目指していた若い選手たちのキャリア形成にも大きな影響を与えます。

現在モナコに所属する元スペイン代表のセスク・ファブレガスは、バルセロナの下部組織で育ち、16歳でアーセナルと契約しました。(イギリスでは16歳からプロ契約が可能)こういった移籍は今後できなくなってきますし、逆にイギリスの選手も18歳までは自国から出られないため、17歳でドイツのドルトムントに移籍したイングランド代表のジェイドン・サンチョの様に、海外クラブでチャンスを掴もうとするケースも少なくなることになります。

■選手登録数についての問題
こういった背景を受け、現在FA(イングランドサッカー協会)はプレミアリーグの選手登録枠の変更を検討しています。現在の選手登録についてのルールは以下です。

・トップチームに登録できる選手は25人まで
・ホームグロウン選手を7名含む必要がある
・ホームグロウン選手以外の登録は最大で18名となる
・23歳以下の選手は上記登録人数に関係なく登録できる
※「ホームグロウン選手」とは
国籍や年齢にかかわらず、イングランドまたはウェールズのクラブで、3シーズンまたは36ヶ月間を21歳の誕生日を迎えたシーズンの終了までに通算で過ごした選手

つまり、イングランドとウェールズで育成した選手を7人入れれば、あとは25人までは自由に登録して良いよ、あと若い選手はどんどん使っていこうね。というのが今のルール。

現在FAが検討している変更案は、ホームグロウン以外の選手の登録上限を25人中「18」から「13」に引き下げようとするもので、つまりもうこの際外国籍選手に頼らずに、自国選手を中心のリーグにしていきましょうというもの。

これに対してプレミアリーグはあまりにも性急かつ場当たり的だと反発しています。これはプレミアにとっては当然で、多くの外国籍選手が集まっているからこそリーグのレベルは高く保たれており、世界最高水準のリーグという肩書がTVなどの放映権料の収入になる訳です。そのステータスを失いかねないとなれば、反対するでしょう。

これはクラブの財政にも関わる問題で、現在プレミアリーグのクラブは世界で最も放映権料をもらえる環境にあります。昨シーズンのリーグ全体の放映権料は24億5600万8346ポンド(約3413億円)、優勝したマンチェスター・シティには約210億円が、最下位で2部に降格したハダーズフィールドでさえ約134億円が分配されました。

この莫大な放映権収入が選手獲得やサラリーの支払い、施設や下部組織への投資に回っており、リーグ全体のレベルを担保しているのです。

さて、ここまでイギリスのEU離脱に伴うプレミアリーグへの影響をまとめてきましたが、今後どういった影響が実際に生じるのかは予想の域を出ません。そもそもが労働ビザの発給や入出国の管理など、国の法律に関わる部分が根底にあり、イギリスとEUは未だに多方面に渡って交渉を続けているからです。

そちらが固まって初めて、今度はサッカー協会やリーグ、クラブが方針を協議していくことでしょう。
ただしいずれにせよ今までの様に、「自由で人材とカネが集まるプレミアリーグ」という形は変革を求められてゆく事になりそうですし、一時的なレベルの低下はもはや避けられないでしょう。

そしてリーグに関わる立場によっても求める形は違うもの。昔ながらのイングランド人中心のリーグが良いという人もいれば、プレミアは世界最高峰であるべきという人もいるでしょう。

今後どういった流れになってゆくのか、見守っていきたいと思います。

※この記事は特定の国家、人種、政治思想に帰属する主張はしておりません。あくまでフットボールに対しての影響にフォーカスを当てているためBrexit問題については概略に留めています。全体を通して事実、背景について誤認がありましたらご指摘下さい、適宜加筆修正させていただきます。

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